平成24年「先輩の授業を受けよう!」

 「先輩の授業をうけよう!」は各方面で活躍する卒業生が行う授業を通して在校生が将来の夢や進路を見つめる機会にしようとするもので、NHKの「課外授業ようこそ先輩」に先駆けて平成8年(1996年)に始められました。当初は母校の創立50周年記念事業の一つとして開講しましたが、現在では学校・PTA・皐城会の共同事業として行なわれています。

 本年は9月15日(土)に開催されました。 

「先輩の授業を受けよう!」講座一覧
講座 講師 紹介 テーマ
1 野原 明 教育ジャーナリスト 身につけたい学力って何?
2 大芝信雄 剣道8段 最も現役でできるスポーツ…それは剣道。そして70歳代の剣道8段が一番強い
3 丹羽伸也 精神科医 ~メッセージを読み取る~
発達障害の豊かな世界
4 福嶌教偉 心臓血管外科医 重症又は末期的臓器不全ってなあに
人工臓器、再生医療、そして臓器移植について
5 振津かつみ 内科医 放射線被ばくと健康・命・人権
〜ヒロシマ・ナガサキ、チェルノブイリ、そしてフクシマ〜
6 勝原裕美子 病院副院長・総看護部長、看護師 日本の社会を動かす看護の力
1000人以上の看護スタッフの力を活かすリーダーシップ
7 美濃部五三男 獣医師 人と動物の絆~犬のことば~
8 中瀬尚長 整形外科医 ドクターズ・ファイルズ;その真実と錯覚

〜ここでしか聞けない医者の話〜
9 印藤弘二 弁護士 あなたが弁護人だったらどうしますか?
ロースクールの授業を受けてみよう
10 林家竹丸 落語家 落語家という職業
~無形の商品を売るビジネス~
11 前田 憲 ドラム奏者 カッコいいリズムとは?
「ノリがいいね!」っていわれよう
12 梅村 聡

参議院議員、内科医

医療現場から国会へ

13

小林祥子 TBSテレビ情報制作局ディレクター 「情報の魅力・人に伝えるとはどういうことか?」
~テレビの「裏側」を知って、 君もニュースの編集長に!~
14 青柳万美 NHK報道部リポーター “話して”伝える
15 尾崎悠一 首都大学東京大学院社会科学研究科 大学の法学部で学ぶということ
16 森安楽人 共同通信社 運動部記者 “好き”を仕事にする ~スポーツ記者の仕事から~

スペースの都合上、紹介およびテーマは一部省略いたしました。


講師のみなさんと

sempai_2012


参加された方から

「先輩の授業」を終えて
3期生 野原 明さん

今回が2度目で、皆さんは何のために勉強するのか、「身につけたい学力って何」かを考えてもらおうという授業をした。目標を持つことの大切さや、マズローの「欲求に関する5段階説」を紹介して、「自己実現」の意味を話したりしたが、一寸難しかったかもしれない。「自分で考えることができる子ども」が授業のキーワーだったのだが。
私としては、生徒諸君と話のキャッチボールをしながら授業を進めようと思ったが、生徒諸君の反応が鈍く、結局私の話す時間が長くなってしまったのが最大の反省点である。


第2講座 大芝信雄さん

授業テーマ
「最も現役でできるスポーツ・・・それは剣道。そして70歳台の剣道八段が一番強い」

 標題のことを理解してもらおうと授業を開きましたが、殆どの生徒が剣道をしたことがないので、前半を、剣道は普通のスポーツ以上に心を磨く「武道」であるという精神や、「剣道理念」「剣道の歴史」「段位」等剣道そのものの概要説明にあてました。そして後半は、日本刀を使い、また防具をつけて実践しましたが、生徒の皆さんはこちらの方が楽しそうでした。
 更に実践の中で、同席した教育実習生の剣道部員や生徒の中の経験者を相手に、お互い 防具を着けて、私との対戦を観てもらえば、高段者との差や、年を取っても剣道はできること を生徒がもっと理解できたかな?と思いました。


第3講座 丹羽伸也さん

 前回同様の後輩諸君の真剣なまなざしに、中学生という時期に一般にもまだ十分理解されていない精神保健の知識に触れることの意味をいろいろと考えました。
生きてゆくうえで彼らが将来どのような知恵を必要とするかを先輩とし伝えるという作業は魅力的で、こういうプロジェクトが母校で続けて行われていることを誇りに思い、関係者の皆様のご努力に感謝申し上げるとともに、この事業が将来的にも存続していくことを心から望んでいます。

24期生  精神科医 丹羽伸也

第8講座 中瀬尚長さん

 自分自身の附中時代の思い出を布石として、その後の医学部時代から現在の整形外科医としての現在の自分に至るまでの多彩なストーリーについて、昨今の医師事情を交えながらをさせていただき、最後にその根底に流れる附中魂(偉そうな事は言えませんが)について独善的に語らせて頂きました。

 授業を進めるうちに、生徒達がとても愛おしくなりまして、自分の昔の姿もかぶってしまい、この子達が羽ばたく為なら何でもしてあげたいなという願いにかられました。創造性あふれる附中生の感性は、今も昔も不変であると肌で感じましたし、その中にこれからの世の中を動かす大きな原動力となる才能が秘められている事も改めて確信しました。「できるなら今から自分も必死で教員の勉強をして、この子達の感性を伸ばしてあげられる立場になれたらどんなに幸せだろう」と、真剣に考えさせられた1日でした。

 最後にこのような本当に素晴らしい企画を運営されておられる山内啓子先生はじめ、皐城会の運営に携わっておられる先生方、スタッフの皆様に心より敬意を表しますとともに、本企画の今後の発展を心よりお祈り申し上げます。


第10講座 林家竹丸さん

 落語家って、どんな仕事? 竹丸特製「落語家人生すごろく」をもとに、入門、修業、稽古、舞台…にまつわる経験談を聴いてもらいました。芸人の得体の知れない生態に、生徒の皆さんは少しきょとんとした様子でしたが、教室で実演
した落語ではちゃんと笑ってくれて安心しました。

 授業のあと、控え室での雑談で山内啓子先生、田中龍三先生から爆笑思い出話をうかがえて、ほんまに楽しい時間でした。あつく御礼申し上げます。


第11講座 前田憲さん

受講された生徒さん、おつかれさまでした。
皆さんたいへん器用で、頭の回転も速く、予想はしておりましたが「良くできるなあ~」と感心いたしました。
 さて、この世界には、なんでも「ウラ」「おもて」がありますね。Tシャツにも「ウラおもて」、野球のイニングも「ウラおもて」、そして人間にも「ウラおもて」!!

陰と陽、アップとダウン、オンとオフ、プラスとマイナス・・・・・

もちろんリズムにも「ウラおもて」が有るっていうこと、ワークを通じて「体感」して頂けたのではないでしょうか?

そして、難しいウラの音符も「タイム」を歌えば、自然とハマってくる。そんなリズムの神髄も垣間みれましたね。
また、簡単なドラムソロも作ってみました。起承転結をつけて、ていねいに歌えば、初心者でも「形に」なりなしたね!
結局、人の音を聞きながら、「同時に」自分のやってることもはっきり打ち出す、「ながら力」が、とっても重要であるということがわかったでしょう。

 これらは全て、音楽だけでなく、仕事や日常生活のレベルアップに直結します。どうか、人生の糧にしてください。
 さて皆さんは今後、社会で多いに活躍されることと思います。おそらくこれから「個人の力」がより問われる時代がやってくるでしょう。「仕事が出来る能力」はもちろんのこと、「芸術を理解、鑑賞できる力」も是非身につけてください。

芸事とは、無形有形の「美しいもの」「カッコいいもの」を生み出すために、ものすごい努力と人格を使うものなのです。しかも、よほどの偶然が無いとそれで収入を生み出すことはできません。

興味の無い人は「あほくさ」というでしょう。しかし生み出していく過程は、必ずその人の内面、つまりウラ側を「美しく成長」させます。

オモテを整えるのは、簡単です。

受験勉強を一生懸命すれば、いい大学にも行ける、社会的地位も高くなる。そして、お金を出せばブランドものの服だって買えます。

ぱっと見、カッコいいですね。

しかし、内面はそう簡単には成長しません。

僕も練習するたびに、演奏するたびに、自分に足りない所がたくさん見つかり、常にそれを克服するために戦ってます(自分と)。

そしていつも「自分がいかに無力か」を、思い知ります。不思議なことに、そんな風に思うと、なんか妙に「スカー」っとして、希望がまたわいてきます。1日のうち、大半はそんな風に感じて暮らしています。

 私事で恐縮でした。では、皆さんのご活躍を心からお祈りいたします!


第16講座 森安楽人さん

 附中を卒業して13年、まさか教壇に立つ日が来ようとは夢にも思っていませんでした。耐震工事などもあり変わったところもありましたが、おおむね思い出と一致する場所ばかり。感慨に浸りながらの授業でした。

 授業では前の週にわたしが取材していた「日本女子プロゴルフ選手権」を題材に「スポーツ記者とは」とか「スポーツに関わる仕事とは」とかいう話をしました。
 その中で生徒に一番伝えたかったのは、附中生のような能力の高い人が自らの好きな分野で日本を引っ張っていってほしいということ。「好きなこと」+「得意なこと」=「理想の仕事」とは言っても誰もがそういった職を得られるわけではありません。でも附中生ならそれは決して高望みでもない。授業をしていて、不慣れなわたしが上手く意図を語れていない瞬間でも、生徒はこちらの気持ちを事もなげに汲み取ってくれました。あらためて後輩たちのクオリティの高さに驚き、頼もしく思いました。

 定期テストで「平均点、平均点」とあくせくしていた自分ですら好きなことをやって生きているんです。自信を持って欲張って、自らが理想だと思う道を堂々と歩んでいってくれたらと感じました。

51期・森安楽人